Trinoline トリノライン
その島は小さな場所であるが、アンドロイドの実験都市として考えると、程よい規模かもしれない。本土からの距離も、その目的に適っている。かもしれない。
古くからの“南国らしさ”も息づく環境の中、過去に悲しみと共に置いてきたはずの“家族”が、目の前に現れたとき。少年と、その親は訝しがりながらも、どこかで少しは喜んだかもしれない。
無垢な年齢で失われた妹が、無垢なままの思考と少し成長した体格で、再び以前のように家族と共に過ごす事は、悪いことではないはずだから。
失われた家族の記憶を持つアンドロイドの少女と、失われたはずの存在により、亡くしたはずの時間を呼び覚ます少年。ふたりは、それからの時を大人たちや周囲と共に過ごす。それは“幸せ”に繋がる可能性もあったのかもしれない。
少なくとも、そのアンドロイドの生みの親である少女にとっては。
そして全ての、可能性を求める者たちにとっても。
アンドロイドと人間が試験的に共存する島で、彼らが見出すものは。“希望”、時にままならない“現実”、そしてもしかすると“生きるという事”だったりするのかもしれない。
せき止めたくても、戻りたくても先に進み続ける世界の中。彼らの青春もまた、先へと向かう。
その時間の中で。
それでも、わたしは。
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