火事が起こった。 八坂総合病院で起こったその火事は、付近を巻き込むほどの大火災となって沢山の被害をもたらした。 そこには、とある研究のために病院で働いていた伏見籐矢の母親、伏見鈴乃も含まれていた。 火事から10年、籐矢は人並みの幸せと不幸せを味わいなら、ごくごく普通に成長する。 しかし、未だ彼の心には母親を失った事故の記憶が深く刻み込まれていた。 燃え盛る炎と、何も出来ない子供の自分、そして母を失ったという過去。 そんな悲しみを抱えながらも、妹の真姫奈と姉のような白峯沙耶と楽しく暮らしていた。 そんなある日――いつもの日常を送る籐矢は見知った顔の女性を見かける。それはどう見ても伏見鈴乃にしか見えない女性だった。 籐矢はどうしてもその女性のことが気になり、その姿を追いかける。 そして対面した女性は、間違いなく自分の母親であった。その母と会話する籐矢だが、どこか、違和感を覚える。 そんな籐矢に対して、鈴乃は笑いながら襲い掛かってきた。自分の母親に突然襲われ、抵抗することもままならずそのまま命の危機に晒される。 そこに突如現れた日本刀を手にした女性が籐矢の命を救うが― 死んだはずの母親が生きている理由、目的、その行動。そして、母親が関わっていたという研究…… 全てがわからぬまま困惑すると同時に、籐矢の胸の奥にはとある気持ちが湧き上がる。 母さんが生きているなら……今ならまだ…… ――抱え込んだ悲しみと過去と対峙する伏見籐矢は、真実を求めて歩き出す。
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