東京からいくつもの路線を乗り換え、片道3時間。 栄えているのは駅前ばかりで、あとは見渡す限りのあぜ道という “よくある片田舎”。 そこが、僕らの新しい家だった。 僕は、父の仕事の都合で東京からこの片田舎に引っ越してきた転校生。 幸いにも転校先の学園ではクラスメイトたちに恵まれ、楽しい毎日を送っていた。 そして、引越してから数日が経ったある日のこと。 学園から帰ってきた僕が玄関を開けると、そこには傷だらけの妹が倒れていた。 慌てて電話を取り、救急車を呼ぼうとして……止められた。 振り返ると、そこには倒れていたはずの妹がいる。 どうして、と言いかけた僕の声は、「なんでもないから」 という妹の声に掻き消された。 傷の手当をしながら、いったい何があったのかと問い詰める。 傷は擦り傷や殴打された痕がほとんどで、それは明らかに誰かから危害を加えられた証拠だ。 場合によっては、警察にも届出を…… そう考える僕に、妹は言った。 「えっとね、あのね…… 実は、わたし……魔法少女なの!」 その目は視点が定まらず、明らかな不安と恐怖を孕んでいる。 そんな苦しい言い訳をしてまで、妹はいったい何を隠そうとしているのか。 その時の僕には、まだ何も分かっていなかった。
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