「次のテスト、カンニングさせてくれたら処女あげるよ」 期末テストを間近に控えた夏の日の放課後、来栖樹は一之瀬響からそう持ちかけられ、呆気にとられる。品行方正、人畜無害、目立たず匂わず波風立てずをモットーに生きてきた樹にとって、響はあまりにも住む世界が異なる人種だった。流されるままカンニングを手伝う羽目になった樹は、その結果として響が本当に処女であったと知ることになる。ではなぜ、それを自分にくれたのか?好意を持たれるような覚えはなく、彼女の態度からも色恋がらみの甘さは感じられない。セフレでもなく。恋人でもなく。言葉に出来ない曖昧な、相応しい例えを見つけられない“偽物(Imitation)の関係(Lover)” ――。 暑い夏の日。ミステリアスな少女に翻弄され、何事にも受動的だった樹は少しずつ変わっていく。 若さゆえの火遊び。刹那的な逃避。持て余した性欲の発露。そこに共通することがあるとするなら、ただひとつ―― これはとびきり真剣な、紛れもない純愛であるということ。 偽物であれ、本物であれ、それ自体に嘘はないということ。 「キミ、私と付き合ってみない?」 こうして始まる、偽物の恋人関係。だがその中で、樹は徐々に響へと惹かれていってしまう。 自分達は、本当に偽物なのか? 本物になってはいけないのか? 樹の懊悩は、深く複雑になっていく……
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