――人は誰もがウソをつく。 自分を守るための嘘。 自分を否定するための嘘。 自分を誤魔化すための嘘。 自分であり続けるための嘘。 嘘にも種類があって、誰もが嘘をつく理由を持っている。 理由は分からない。けど、嘘をついているのは分かる。 そんな中途半端な能力を持つ少年・櫻井宗一郎 。 しかし、その能力を得た代償は必要なわけで。 彼は能力を得た代償を支払うため、数々の依頼をこなし続けていく。 その結果、今では “学園一の問題児” と囁かれるまでになっていた。 「後期課程一年の櫻井宗一郎先輩ですよね」 入道雲を見上げていた宗一郎の瞳に映ったのは―― 敵意の籠った視線を向けてくる一人の少女。 「生徒会所属の 和泉葵 です。 猫の手部の監査をするために派遣されてきました」 それは、一年前の初夏の日。 ふたりは出会い、近付いて、そして……離れてしまった。 ――それから、一年後。 紆余曲折を経て、猫の手部にも新入部員が加入。 順風満帆とはいかずとも、それなりに騒がしい日々は過ぎていく。 ――そのはず、だった。 「……これは、いったいどういうことなんだ」 一年前に、一度だけ訪れた部屋。 昨晩の記憶を思い出そうにも、激しい頭痛が襲い掛かってくる。 そして隣りには―― いつも、口では自分への憎まれ口を叩く少女が………… 抱きつきながら眠っていた。 それも、なぜか裸で。 追憶の先へ(Ahead of the reminiscence)―― 波乱の夏が幕を開ける。
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