——これは“魔法少女”のための物語だ。 遠い昔。 幾人かの特別な女の子たち——“魔法少女”が人類の未来を救ったという。 その闘いは熾烈を極めた。 誰もが傷つき。 誰もが泣いて。 誰もが祈った。 ごく当たり前にすぎる“戦いの物語”がそこにはあった。 しかし……。 傷つき。 泣いて。 祈っても。 少女らは誰に感謝されることもなく。 誰に賞賛されることもなく。 ……誰に、知られることもなく。 それでも“戦い”は、無事に終わった。 “人類の未来を守るための物語”を、これ以上ないハッピーエンドに導いた。 そしてそれからおよそ十年後の現在。 ……春。 さくら咲き乱れる出会いと別れのその季節。 かつて人類の未来を救った少女たちは、今はもう“魔法”を忘れ——ごくふつうの少女として生きていた。 誰もが当たり前に遭遇する、ごくごくふつうの当たり前な困難に、頭を抱え、迷い、生きる道を探してた。 そんなある日。 さくら舞い散る、春の中。 「……お願いします」 少年、奏大雅は、もうひとつの春と再び出会った—— 「お願いします。どうか私を、魔法少女に戻してください」 これは“魔法少女”のための物語……。 なんかでは、ない。 これは、幸せを探し出すための物語。 これは、あなたの人生のための、物語。 さくらもゆ“夜”の中……。 もう二度と、君が悲しまなくてもいいように—— さあ、引き金を引け。 たったひとりの君を救うため。 俺は。 俺は何度だって、散りゆくのだと——……
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