きっかけは一冊の手記だった。 偶然手に入れた手書きの手記に記されていた“地図にない村”。 そこは―― 狂い咲く椿、一足早い紅葉、沢山の赤い花々。 気が狂いそうに赤い森に囲まれた山奥の寒村、来待(きまち)村。 青年はその村に来訪神(まれびと)として迎えられる。 ようこそ、おいでくださいました。御廻様(おめぐりさま)。 今年の祭りは二十年に一度の特別な式年大祭でございます。 この者たちは、この特別な年に訪れる御廻様のために生まれ育った 斎(いつき)の者たちでございます。 ふたりは毎夜交代で伽に参ります。 村の美しい娘を一夜妻として神に差し出す…… これは古代からつづく大切な斎の儀式。 神を歓待するための、神聖な行為なのです。
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