舞台は、本土西端の海上に建設された人工都市『千砂倉』、バブル絶頂期に計画され、頓挫した一大アミューズメントシーパークを某企業が買い取り、高級リゾートとして整理した街。陸続きの孤島である。

その中央部に位置する古びた洋館の地下。一人の青年、七瀬しずるは記憶のないまま、意識を取りもどした。けだるげな中で自分に寄りそう二人の美少女姉妹、麻由と麻奈。しどけなく裸体を晒し、身体を絡めてくる二人。気が強く、自分の欲望のままに人間を絡め取る麻由と、奥手でなすがままの態度をとる麻奈。訳もわからないままに彼女たちに血を吸われ、しずるは夜の帝王としての血を得た。

『俺は誰なのか。何のためにここにいるのか？』

いくつもの疑問は、溶け込むように魅惑的な血の香りに飲み込まれ、快楽的な衝動だけが残った。二人に導かれるように、しずるは『千砂倉』の街を徘徊する。不死身の肉体、人間離れした精神、そして意のままに従う美少女たち。いつしか、しずるにとって『千砂倉』は恰好の『狩場』となった。

人間であることに不満を持つ人間たちを狩り、彼らの末路を面白おかしく、見つめながら、二人の美少女と、時には犠牲者たちも交えて淫蕩の極みをつくす。それが、彼の日課となっていた。

そして同時期に、一人の少女が『千砂倉』を訪れる。その愛くるしい容貌とは不似合いな、血の臭いにまみれた瞳。それは、闇に生きる者たちへの憎悪で満ちていた。

見えない糸でつながれた、『奪われた』者と『与えられた』者。二人はやがて出会う。

敵としてか、それとも…。